10/22
ティッシュタイムフェスティバルという音楽イベントに行ってきた。
銀杏BOYZ、ガガガSP、サンボマスター、氣志團、オナニーマシーンの5バンドを一日に見れるフェス。凄すぎる。
こんな豪華なメンバーが集まったのは、やはり全員に「イノマーのために」という思いがあったからではないかと思う。
イノマーさん(以下敬称略)とは、オナニーマシーンのベースボーカルで、2000年頃にオリコンの編集長をしていた人だ。昨年ステージ4の癌を診断され、余命3年と宣告された。
2000年頃、まだ20歳前後だったゴイステやガガガSPやサンボマスターや氣志團は、彼が書いた音楽記事やプッシュアップのおかげで、今も活動を続ける大人気バンドにのし上がった様だ。
今日のアクトは全員MCでイノマーへの感謝を述べていた。
イノマーへ力を、愛を、希望を、奇跡を、と言わんばかりの演奏だった。
前説が注意事項説明してる中堂々の登場。フロアの熱狂により前説は中止に。
ティッシュタイムフェスティバルの幕開けは「星に願いを」。
その熱狂のまま、「東京少年」「若者たち」。ゴイステ時代の曲を掻き鳴らした。
極みつけに「駆け抜けて性春」。
青春、いや性春とはこのフェスの1番のコンセプトであっただろう。場内の興奮が最高潮に達したのが分かった。
興奮止むことなく、「愛しておくれ」。
その後は「BABYBABY」から「ぽあだむ」で最後まで駆け抜け、アンコール代わりに新曲アーメンザーメンメリージェーンを披露して幕を閉じた。
これだけ峯田さんが名曲中の名曲、そしてゴイステ時代の曲をセレクトしたのは、やはり2000年初頭にお世話になったイノマーへのアンサーだったのではないかと思う。MCの中でイノマーへの直接の言及はなかったものの、演奏でそういう部分を伝える辺りが峯田さんらしくて好きだった。
リハで「素晴らしき人生」「弱男」を披露し、リハとは思えない盛り上がりを見せた。
1曲目は「線香花火」。
嗚呼、線香花火よ。当たり前の事しかない現実に、ふと僕の意識が飛ぶ程に、全てを照らし続けてくれないか。
この歌詞を絶叫している私の意識はほぼ飛んでいた。銀杏BOYZの後にガガガSPが演奏をして、その後にはサンボ氣志團オナマシが控えているのだ。
どこが当たり前の現実だと言うのか……
こんな凄い日を生きれて良かったと。
1曲1曲このスタンスで書いてたらキリがないのでやめようと思う。
線香花火
晩秋
青春時代
忘れられない日々
国道二号線
つなひき帝国
明日からではなく
笑顔あり、涙あり、何より盛り上がり熱狂、というガガガSPの素晴らしさが詰まったセトリだった。
コザックさんがMCで「神戸でずっとやって行くつもりだったけど、ガガガの曲を東京で初めてレビューして雑誌に載せてくれたのがイノマーさんで、それで東京に来れた」という話をしていた。
それを経て、今ここで唄っているガガガSP、なんて青春なんだろうか。涙が出そうだったが、その暇も与えてもらえないほど曲で盛り上げてくれた。
大人のカッコ良さと、子供の無邪気さを兼ね備えた彼等は無敵だった…
1曲目がオナニーマシーンのテーマ。
天皇即位の傍らで「オナニー!」と叫ぶのには背徳感があった。
その後コザック前田と共に「さよならベイビー」、「夜汽車でやってきたアイツ」、「その温もりに用がある。」
フェスではやらない曲だろう。
どれも2003年のアルバム「新しき日本語ロックの道と光」からの曲。
やはりサンボマスターにとっても2000年初頭のイノマーさんとの思い出は深く、その絆を背景にその頃の曲をやったのだろう。
MCで「無名の頃にティッシュタイムフェスティバルにオナニーマシーンが呼んでくれた。お客さんは2人だった。」というエピソードトーク。
「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」でラブアンドピースの大合唱。世界一平和な空間がそこにはあった。
しかし山口さん、突如演奏を止め、「泣くなと言っているのに泣いている奴がいる」と言い出す。
「冷静に考えて見てみてくれ、太った40代のオッサンが汗だくでなんか歌ってるだけだぜ」
という山口さんの言葉に観客が笑うと、
「笑ったね。世界はそれを愛と呼ぶんだぜ!!!!」
愛という言葉を口にしていいのはこの位愛のある人間だけなのだな、と思った。
その後、20年もやっていくと、やはり苦しいことや辛いことがあった、それでもここまやでってきて、あなたの居場所をつくりに来た、癌と戦うイノマーさんの居場所をつくりに来たというMCから、「輝き出して走っていく」。
全ての演者と、我々観客と、何よりイノマーに向けて、「負けないで 君の心輝いていて 大丈夫 乗り越えられる」と。
音楽のもたらす希望の力とはこんなにも大きいのか。全てが大丈夫な気さえした。
1曲目は「砂の丘~Shadow on the Hill ~」。その後「Let's Dance」、「俺たちには土曜日しかない」と氣志團らしいノリノリのダンスナンバー。
4曲目「One Night Carnival」で観客を盛り上げた。
その後「ワンナイトカーニバルが大して盛り上がってない!」という所から寸劇が始まり、
One Night Carnival 2019~U.S.A.ver~
One Night Carnival 2020~恋ダンスver~
を披露。何を言ってるのか分からないかと思いますが私も何が起こってるのか分からなかった。(ポルナレフ状態)
とにかくめちゃめちゃに笑った。
その後は最近の曲
「今日から俺たちは!!」「鉄のハート」で幕を閉じた。
正直氣志團に関して私はにわかだったのだが、氣志團もそのような客層を想定してか、初見の観客も盛り上げるMCで本当に楽しい時間だった。ベテランは流石…
氣志團の綾小路翔は変臭長(編集長)イノマーに突如コラムを送り付けた過去があるらしい。もっと凄いのはそのコラムをイノマーが採用して掲載した事だが…2人はそれ以来のお付き合いらしい。そのエピソードトークにイノマーへの感謝の言葉が詰まっており、胸が熱くなった。
やはりイノマーの登場には会場が驚きを隠せない様子だった。
車椅子で登場し、抗がん剤の副作用だろうか顔は浮腫み、手足は棒のように細かった。切除された舌から発する言葉は少しだけ聞き取り辛かった。
全員が「この状態でライブをするの?」と疑問と不安を持ったはずだ。
それでも彼等はやった。
酸素スプレーと水を交互に口にしながら、
チンチンマンマン
あの子がチンポを食べてる
恋のABC
オナニーマシーンのテーマ
最低で最高の曲を最後までやり切ったのだ。
唄は歌詞の一つ一つが届いたし(100%下ネタだったが)、弾くベースは現役そのものだった。
私はそこに、人間の魂の美しさを見た。
末期ガンの男がステージに立つこと、それを支えること、そこに至る覚悟は容易ではなかったはずだ。
それでも、彼等は魂で我々に「貫き通す生き方」の 美しさを見せてくれたのだ。
涙が溢れた。本当にライブをしてくれてありがとうという観客全員の気持ちが「オナニー」という叫びに乗っていた。
アンコールでは演者が全て登壇し、ティッシュをばら撒きながらI LOVE オナニー、オナニーマシーンのテーマを唄った。
ティッシュはしっかり濡れてクシャクシャになっており、しっかり最低だった。
銀杏、ガガガ、サンボ、氣志團、オナマシ。どのバンドも、信念を持ち続け、同じスタンスで魂を歌い続けたバンドだ。
信念を貫き通して、努力し、苦悩し、仲間と支え合い、やりたい様に遊び続けた人間たちが集結し、オナニーを叫ぶ。
これほどに人間の魂の美しさを見れる機会が今後あるのだろうか、という程に美しかった。
歌詞の汚さを凌駕する美しさ。
いや、オナニーという歌詞だからこそ生まれる人間味が、この「信念のある人間の魂」の美しさをを引き出したのだろうか。
最後は演者全員が1列に並び礼をし、オナニーティッシュの花吹雪舞う最低で最高な1日は幕を閉じた。
あと何回オナマシがライブをしてくれるのかは分からない。少なくともこのアクトが一同に会すことは、次のティッシュタイムフェスティバルまでないだろう。
しかし、今日観客が見た「人間が魂で唄う姿」というのは一生心に刻まれるものなのだと思う。
少なくとも私は今日を一生忘れない。
峯田、イノマー、山口、綾小路、、、
今やロック界の大スターといえるボーカル達がイノマーを囲んで唄う姿は、過去約20年間彼らが歩んで来た道の始まりにイノマーが居たのだという事を思わせた。
何より彼らに囲まれ、観客の熱い「イノマー」コールの中で唄うイノマーの姿は、青春パンクロックの、人間の魂の全てであった。
21世紀青春パンクロックの、信念を持った人間達の魂の、その集大成が10/22の豊洲にはあったのだ。
そんな瞬間に立ち会えた私は、本当に幸せ者だ。彼らの生き様を見せつけられた私は、彼らの音楽があれば生きていける。彼等のように、私も信念を持って生き続けようと思った。
ありがとうイノマー。皆さん。